間違いだらけのカタルシス理論

2013年04月16日

間違いだらけのカタルシス理論  目次



間違いだらけのカタルシス理論



間違いだらけの 「カタルシス理論」 はじめに



1.メディアの影響に関する学説

支持される 「新・強力効果論」 支持されない 「カタルシス理論」

検証・宮台真司が広めたメディア悪影響否定論 (再掲)




2.とっても怪しい 「怪しい児童ポルノ規制法案」

思いっきりカタルシス理論を正当化するサイト

冒頭から破たんをきたすランナー氏の論理

カタルシス理論への固執が招いた自己否定 (というか自爆)

犯罪の原因は表現規制や性表現減少だけなのか?

こんなグラフが許されるなら何だって印象操作できる!

「マドンナがアメリカの性犯罪を減少させた」 という妄想

まともに取り合うべきか迷うレベルの 「フィルタリング否定論」

混じりっ気なしの偽善と解釈せざるを得ない!

とっても怪しい 「怪しい児童ポルノ規制法案」 が与えた影響など




3.他サイトによるカタルシス説批判

スウェーデンをディスるコピペに対する疑問。- 荻上式BLOG

統計、特に犯罪統計の扱いについて - 児童小銃

山本弘に目に見える形で反論を提示する - Togetter

己のバカを目に見える形で提示するバカwww - 消毒しましょ!

ノート:東京都青少年の健全な育成に関する条例 - Wikipedia part1

ノート:東京都青少年の健全な育成に関する条例 - Wikipedia part2




4.内閣府スレにおける議論

一体誰が何のためにこんなウソをばら撒くのか?

カタルシス理論が本当なら、ロリコン集団は犯罪者予備軍の巣窟

根拠がどこにもないカタルシス理論

表現規制されて性犯罪に走った奴などいない!

反対派も賛成派も犯罪因果関係論は止めにするべき

売春防止法と性犯罪推移に関する議論

“Porn Up, Rape Down” は2ch のコピペレベル

デンマークの科学研究で児童ポルノは無害と結論......?

ロリコンが危険な犯罪者と化す契機は規制だけではない



5.英国の強姦件数と児童ポルノ規制の因果関係


英国の強姦件数と児童ポルノ規制の因果関係

児童誘拐と重比率の問題

16歳未満不法性的交流について

カタルシス理論支持者は性犯罪被害の増加を心から望んでいる!

gma 氏との議論

何を信じろ?反対派のウソは信じるなと言いたい!

スコットランド単純所持禁止の影響

「やっちゃならねえ!迂闊な主張」 にすがる人たち

何度でも言う 「反対派は間違っている」



6.表現に影響された犯罪者


子どもの犯罪被害データーベース 性犯罪

表現に影響された犯罪者 nemo 収集記事



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間違いだらけの 「カタルシス理論」 はじめに


間違いだらけのカタルシス理論



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世の中には3つの嘘がある。


一つは嘘、次に大嘘。そして統計である。



――――― ベンジャミン・ディズレーリ







児ポ法や東京都の青少年保護条例に関心を持っている方なら、
規制反対派による


「表現規制が強化されると性犯罪が増える」

 「性表現の流通量が増えると性犯罪が減少する」

  「性表現の流通量と性犯罪の認知件数との間には
    負の相関関係がある」



などといった主張を一度は目にしたことがあるかと思います。


これらは 「カタルシス説」 「ガス抜き理論」 などとも呼ばれる、


メディアに接することで、それらが“はけ口”となり、
攻撃衝動などが減少するという理論



を、犯罪統計などの裏付けで実証を試みることで、
「表現規制こそが社会にとって有害なのである」
と主張する立場にたっています。


この主張は、決して規制反対派の多くの支持を得ているわけではありません。
そもそもこの手の主張がなされるようになった発端は、


「性表現・暴力表現の悪影響で犯罪が増える」


という規制推進派の主張に対し、あくまでカウンターとして、


「統計などを見る限りは増えていない」


という反論を対置するという動機が働いていたと思われますし、
冷静かつ消極的レベルにとどめた上で主張している意見も
数多く見られます。


このように、悪影響の有無の議論にはあえて踏み込まず
ささやかな反証を提示することで相手の主張を相対化する受動的姿勢は
議論の手法としては有効であると評価できます。



しかし、頭に血が上りやすく純粋でダマされやすい
一部の狂信的規制反対派がこの主張に触発され、
犯罪統計やら規制施行年やら性表現史やらをいろいろ突き合わせ、
自分に都合のいい事象のみを切り貼りした分析を
無駄に大量にひねり出した結果、
もしくは都合の悪い事実を無視したり強引に都合いい方向に
捻じ曲げて解釈した結果、


「これだけのデータがあるのだからどうみても
  規制は犯罪を増やすし、性表現は犯罪を減らす」



という極論を信じ込み、デマとして流布しているという
事実も確かに存在します。


ここまで来ると、これはもうカルト的妄執の域と言って過言ではなく、
実際 「反・規制反対派」 の人たちから失笑を買うネタと化してもいるのですが、
困ったことにこんな主張を真に受けてしまう規制反対派も
一定の割合で存在しているというのが現実のようなのです。




彼らの主張のいったいどこが間違っているのでしょうか?






1.メディアの影響に関する学説

では、最初にメディアの影響問題に関して学問的研究が
どのような見解を下しているのかを解説します。

ただ、私は専門的な知識を有しているわけではありませんし、
余り小難しい話をしても面白くないと思うので、
いくつかのソースを手掛かりにできるだけ簡単に概要を述べたいと思います。
ソースのURLを最後に呈示しておきますので、
詳しい話に興味のある方はリンク先を参照してください。


2.とっても怪しい 「怪しい児童ポルノ規制法案」

では、上記サイトの主張に対して批判の論陣を張っています。
このサイトはデータだけは(無駄に)大量に蓄積されていますが、
それに対する解釈がどれもこれもムチャクチャで
突っ込みどころ満載であるにもかかわらず、
これを真に受ける規制反対派が少なからず存在するという点で
批判のためのエントリを立ち上げる値打ちがあると考えました。
ちなみに、このサイトは私が作った英国強姦件数のグラフに
恣意的な項目を付け加えて強引な解釈を施しておく一方で、
厚顔無恥にも肝心の私の主張に対しては見事にバックれているという
ある意味 「やらかしてくれている」 因縁の相手でもあります。


3.他サイトによるカタルシス説批判

では、カタルシス説を支持する規制反対派の
統計解釈の間違いや論理的誤謬を指摘しているブログやサイトを
紹介します。


4.内閣府スレにおける議論

では、私が主戦場としている 2ch の内閣府スレにおける、
メディアの影響を扱った議論をまとめてエントリします。
上の1.3.に比較すると素人議論レベルとの印象は
免れませんが、他では見れない面白い論点も
たくさんあってそれなりに参考になるかと思います。


5.英国の強姦件数と児童ポルノ規制の因果関係

では、同じく内閣府スレで議論した中で、
同タイトル既出エントリに対する反論から始まった議論と、
凪に反日って言われちゃった v(^_^ ) の gma 氏(仮称)との
議論をエントリします。
英国関連の議論ではわからないなりに英文和訳に挑戦して
いろいろ調べたりした結果、これまた他では見れない情報が
いくつも含まれているので、面白く読んでもらえればと思います。


 

                  (2011/5/26 entry)



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支持される 「新・強力効果論」 支持されない 「カタルシス理論」



間違いだらけのカタルシス理論






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マスメディアの影響に関する研究は、1920年代から
主にアメリカで盛んに行われて来ました。


当初は、ウォルター・リップマンが提唱した「強力効果論」が主流でした。
これは、「弾丸理論」 「皮下注射モデル」 とも呼ばれる
「マスメディアは人々に対して直接的に強い影響を与えている」
という理論で、
 (当時のマスメディアといえば主に新聞・ラジオですが)
報道の提示する疑似環境に人々の意識が影響を及ぼされ、
反応し何らかの行動を起こすというものです。


また、擬似環境に反応する際、人はステレオタイプを用いやすいことから、
マスメディアはステレオタイプも熟成するとも考えました。


これらは特に、ナチスドイツによる感覚系メディアを用いたプロパガンダに
多くのドイツ人がダマされたという事実をもって、
マスメディアの強力な影響力に対する警告という意味合いを
持ち合わせていました。


1940年代に入ると、ポール・ラザーズフェルドやジョセフ・クラッパーによる
「限定効果論」 が支持を集めるようになりました。

情報の受け手は自分の信念や考えに基づいてマスメディアに対し
選択的に接触をしているので、マスメディアはごく限定的な影響しか
与えていない
という理論で、コロンビア大学が行った
エリー調査という実証調査研究の裏付けがあり、
素朴な強力効果論はほぼ否定された形となりました。


しかし、1960年代後半になって、テレビというより強力なメディアの
普及により、「新・強力効果論」 が台頭してきました。
これは「限定効果論」 を全否定するものではありませんが、
「頑固な受け手さえも屈してしまう複雑かつ巧妙な
社会的トリックが存在する」

という視点で、マスメディアが強大な影響力を持つにいたる
「議題設定機能」「沈黙のらせん」「培養効果」 などの
様々なモデルが提唱されるに至りました。



ところで、これまで述べてきたことは主に
「政治的主張がメディアを通じて人々にどう影響を与えたか」
という論点に関する学問的知見であり、
児ポ法議論によく見られる
「性表現や暴力表現がどう影響を与えるか」
という議論とは若干趣が異なります。









こちらの方もアメリカで1970年代以降、
盛んに研究がおこなわれて来ましたが、
「直ちに悪影響を及ぼす」 といった単純な強力効果論ではないにしろ、
「影響を与える様々な要因が存在する」 という点で
「新・強力効果論」 と同じ文脈を持っています。


主な理論モデルとしては以下の4つが挙げられます。




(1)カタルシス理論


 メディアに接することで、それらが“はけ口”となり、
  攻撃衝動などが減少するという理論。
   支持する証拠が少なく、研究者の間では評価されていない。



(2)観察学習理論
 メディアに接することで、そこに描かれた行為を学習し、
   状況によっては学習した行為を実行するという理論。
    支持する証拠は多いが、
     悪いモデルから悪い影響を受けるだけでなく、
   良いモデルから良い影響を受ける傾向もあるとされている。
  ただし、どういう状況で学習されやすく、
 また、どういう状況で学習内容が
行動化されるのかはよく分かっていない。


(3)脱感作理論 

リラックスした状態でメディアに接することにより、
  そこに描かれた内容と弛緩状態が条件づけられ、
    描かれた内容への抵抗感が弱まるという理論。
   支持する証拠は多く、神経症患者の治療にも応用され、
  効果を発揮しているという。暴力表現などとの関連では、
 脱感作を起こしやすい内容や効果の及ぶ期間などが
今後の研究課題とされている。


(4)カルティベーション理論 

メディアに接することで、メディアに描かれた世界と現実の世界を
  混同するという理論。暴力表現などとの関連では、現実世界には
   実際よりも暴力があふれているという認識が深まり、
    社会に対する不安が増大するとされている。
   支持する証拠が少なく、
  研究者の間ではあまり評価されていない。


ちなみに、これらは主に暴力表現による影響を扱った研究で、
児ポ法議論に関連の深い性表現による影響に関しては、
モラル的な見地から最近はほとんど行われなくなりました。
 (被験者にポルノを閲覧させて反応を見なければならないため)


ただ、1980年代まではかなり踏み込んだ研究も行われ、
ハードコアなどの暴力的性表現が
女性への暴力衝動を高めるといった、悪影響を検出した研究も
しばしば見られたようです。


また、強姦や強制わいせつを扱った暴力的性表現が与える影響力を、
上記の理論モデルに敷衍できるのではないかという見解も存在します。


したがって、今後も研究の余地は大いに残されていると言えますし、
現時点でも 「メディアによる悪影響は確かに存在する」 という見解が
研究者の間で主流になっているのは間違いない事実なのですが、
これらの理論を用いて包括的に性表現を法規制するには
根拠がまだまだ希薄であると言わざるを得ないのが現状のようです。



ここで改めて強調しておきたいのですが、

   1.強力効果論や限定効果論などのメディア効果研究

   2.暴力表現の影響に関する研究

   3.性表現の影響に関する研究


これら3つは別物であると踏まえておく必要があります。
2. と3. はある程度互換性がありますが、
そこに 1. を混同することは、かなり強引な論法であると言えます。




最後に、このカテゴリのメインテーマとなっている
「カタルシス理論」 ですが、研究者の間で支持されていないという
事実はもとより、この理論も 「新・強力効果論」 のひとつであるという
認識を、規制反対派は十分踏まえておくべきでしょう。














2011/6/22   追記

カタルシス理論が支持されない状況に関して、
もう少し詳しく引用しておきます。



基調講演 「ゲームやビデオが子どもに与える影響について」:文部科学省
      (web 魚拓)


それと、もう一方で「カタルシス効果」の理論というのがありまして、
これは何かといいますと、暴力シーンを観ることよって、
その欲求不満が解消されて、かえって暴力性が無くなるという、
悪影響と対立する議論ですね。


これは、だんだん研究が進んでまいりますと、
その「カタルシス効果」の方を実証している研究に、
実験方法の不備がある、

ということが指摘されるようになってきました。


確かに「カタルシス効果」というのは有るかもしれない。
ただ、欲求不満の解消としては、それは短期的なものに留まる。
時間が長くなってくると、やはり「暴力はよいものだ。」という
「価値観の学習」が長く続くので、それが強くなってくる。


だから、長期的なスパンで見てみると、やはり悪影響という方が
強いだろう、という議論が優勢になってきました。





カタルシスの効果 | ざつがく・どっと・こむ
      (web 魚拓)

 暴力的な気持ちになったなら、パンチングバッグでも叩いて発散させれば、カタルシスが得られてすっきりするって、言うじゃない。でも、実証研究からは、カタルシス効果って認められていないんだよね。残念。それどころか、むしろ攻撃性を高めるんだって。斬り。


 米国の研究者らが、被験者に怒りの感情を抱かせて、その後どういう行動をとるかを実験した。カタルシス効果を信じている被験者は、リラクゼーションなど反カタルシス効果を信じる被験者より、攻撃的な行動を選ぶ率が高い。しかもその攻撃性は、怒りの原因となる相手に対してであろうと、それ以外の人に対してであろうと、変わりなかったという。


 研究者らはさらに、パンチングバッグを叩くことを楽しんだ被験者は、より攻撃的になる傾向が見られたという。気持ちをすっきりさせると信じてとった行動が、攻撃性を高めている。その理由は、プライミング効果といった心理面からも説明できるけれど、オランダとハンガリーの研究者らが最近行った研究は、ホルモンという視点から裏付けている。


 彼らが行ったのはネズミによる実験。暴力をつかさどる神経経路を刺激すると、ストレスホルモンに対する反応が高まる。次にストレスホルモンを投与すると、行動が攻撃的になる。つまり、暴力的な行動がストレスホルモンを増やし、増えたストレスホルモンがいっそう攻撃性を高めるという、悪循環が芽生えているのだ。





<< 捕 捉  >>


リップマンの強力効果論ですが、彼が独自研究をやって
こういう名前の付いた理論を発表したのではなく、
後の限定効果論提唱者たちが、それまで常識となっていた
リップマンらの主張に対し、自分たちの理論と区別する意味で
「強力効果論」 と名付けた、と言った方が正確なようです。

また、強力効果論という名称ですが、
それを使用せず 「弾丸理論」 「皮下注射理論」 と呼称し、
「新・強力効果論」 の方を強力効果論と名付けている
ソースも複数存在し、ちょっとややこしいことになっています。


  ■ 呼称パターン 1 ■

    強力効果論 (20年代)
      ↓
     限定効果論 (40年代)
        ↓
       新・強力効果論 (60年代後半)


  ■ 呼称パターン 2 ■

    弾丸理論、皮下注射理論 (20年代)
      ↓
     限定効果論 (40年代)
       ↓
      強力効果論 (60年代後半)




児ポ法の議論ではパターン1の方が多く使用されるため、
本エントリでもそっちの呼称に準じています。









<<参考URL>>


メディアの影響
      (web 魚拓)

基調講演 「ゲームやビデオが子どもに与える影響について」:文部科学省
      (web 魚拓)

スポーツ・青少年分科会(第35回) 議事要旨:文部科学省
      (web 魚拓)

ゲーム研究データインデックス | テレビゲームへの正しい理解を
      (web 魚拓)

王様を欲しがったカエル | メディアがセックスや暴力に及ぼす影響に関するモデル理論
      (web 魚拓)

マス・メディアの影響
      (web 魚拓)

関西学院大学総合政策学部山中速人研究室1
      (web 魚拓)

関西学院大学総合政策学部山中速人研究室1 その2
      (web 魚拓)

Socius_社会学感覚11マス・コミュニケーション論
      (web 魚拓)

Socius_リフレクション16
      (web 魚拓)

ITmedia News:(3)「貧しい漫画」が向き合ってきた自由と責任と (4/4)
      (web 魚拓)


  (以下 PDF)

第7回 バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会

マスメディアによる青少年の逸脱行動への影響

テレビメディアと市民社会

効果論研究史における限定効果論と強力効果論の関係の在り方




                      (2011/6/21 entry)


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検証・宮台真司が広めたメディア悪影響否定論 (再掲)


間違いだらけのカタルシス理論




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ネットで児ポ法や都条例の議論においてメディアの影響、
もっと言うと 「性表現による悪影響」 についての議論を色々見ていますと、
どうも 「宮台真司が広めた悪影響否定論」 を盾に取った規制反対論が
支配的のようです。


たとえば、宮台氏はジョセフ・クラッパーの限定効果論を引用して
次のように主張します。


宮台真司氏講演:メディアの影響とメディア規制 - kitanoのアレ
      (web 魚拓)

「限定効果論」というのは、一口で言えば
「もともと暴力的な性質を持つ人間が暴力的なメディアによって
引き金をひかれる可能性がある」ということです。


これはですね、「引き金をひくなら悪いじゃねーか」と皆さん思うでしょうが、
いい悪いは別といたしまして、問題はその先にあるんですよね。
じゃあその引き金になるからといって暴力的なメディアを規制したとして
暴力的な性質を持った人間は引き金をひかれないかと言えば、
そういうことは“まったく無い”んですね。
マスコミがひかなければ別の者が単にひくだけの話し。
単なる確率論的な問題です。


ですからクラッパーは、いくつかの本の中で繰り返し
「人間が暴力的になる理由は、メディアの悪影響によるというような
単純なもので考えることはできない。
そのために必要な考察、調査研究はこれは膨大なものであって、
そのようなものを強力効果論のごとき単純な図式で覆い隠してはいけない」
というふうに言いつづけてきたわけであります。


宮台真司といえば有名な知識人だし、コワいくらい頭のいい人、という
イメージがあるので、彼がそういうならそうなんだろう、と
私なんかも割と無批判にこの図式に乗った議論を過去にやってきました。
 (後で紹介する内閣府スレの議論でも、宮台氏の広めた限定効果論を
   肯定的にとらえた私の主張が登場します)


そんな中、2010年5月ごろ(正確な日付は不明だがおそらく5月20日)
「有害」 規制監視隊が自身のサイトにて、この宮台説に
真っ向から異を唱えました。


検証・宮台真司が広めたメディア悪影響否定論
      (web 魚拓)


これに対して宮台氏がツイートにて反論を行い、


宮台真司(@miyadai)/2010年05月/Page 2 - Twilog

限定効果説についてのツイートまとめ - MIYADAI.com Blog
      (web 魚拓)


更なる 「有害」規制監視隊 からの再反論も
追記部分で行われていますが、これを見る限りでは
宮台説は完全に論破されてしまったという印象は否めません。


これに関しては以前、別エントリでも取り上げましたが、
今回このカテゴリにて改めてあらましを要約しようと思います。
 (以下、引用文の( )内は私のコメントです)
  





「有害」 規制監視隊による批判

● 
宮台教授の説明は極めて不十分。
   新しい強力効果モデルを無視している。

● 宮台教授によると、「短期的影響は間違いなくあるが、
   長期的影響は認められない」

● しかし、クラッパー説の元となった研究は最初から短期的影響の問題に
   限定して行われたもので、長期的・累積的影響を語るには限界がある。

● にもかかわらず、宮台教授は長期的影響にも限定効果論を用いるという
   「独自の解釈」 を披露している。

● 宮台教授の 「受容文脈論」 について。 教授は 
  「どういう状況でメディアに接するかによって、影響の大きさは変わる」
   と主張する。
   (これを根拠にして、子供が暴力的なシーンに接するときに、
     親が助言してやれば悪影響は軽減する、
      という具合につながるわけですね)


● しかし、影響を左右するのは視聴環境だけではない。
  視聴者についての、 「男性である」 「もともと暴力性が強い」 
    「視聴前に怒りを感じている」 (以上、本人要因) 
  表現についての 「暴力が賞賛されている」 「正当化されている」
  「現実的である」 「暴力をふるう人物が魅力的」 
  「または視聴者に似ている」   (以上、コンテンツ要因) 
  などの条件を、宮台教授は無視している。
    (この○○要因というのは、宮台氏の反論にも出てくるのですが
     理解しやすくするために色分けしてあります)





宮台氏による反論

● 
クラッパー後の反証 (新強力効果モデル) は、
  限定効果論の図式をいささかも超えるものではない。

● 初期の強力効果論は、 
 「悪影響の要因 = コンテンツ要因」 だった。
 限定効果論は、
  「悪影響の要因 = コンテンツ要因本人要因視聴環境要因
   と置き換え、よってコンテンツによる影響は限定的である、とした。

● コンテンツ要因の制御は副作用が大きいので、悪影響を回避するなら
  まず本人要因視聴環境要因の制御を政策的に行うべき。

● 暴力の扱いが肯定的か否定的による差の研究などは、
  コンテンツのバリエーションによって
   影響が異なるのは自明だから、

  クラッパーの図式をいささかも超えない。

● クラッパー後は、
  「悪影響の要因 = コンテンツ要因本人要因視聴環境要因
  から、
  「悪影響の要因 = 短期的接触、長期的接触、
           本人の素質、本人のそのときの感情
           
視聴環境、社会的風潮
  という要因が加わったが、もともとの形は不変。

● クラッパー説のキモは、悪影響の要因は複数あるという点にあり、
  それを無視して、限定効果論を狭義にとらえて 「反証された」 と
   騒ぎたてるのは頭の悪い議論である。




「有害」 規制監視隊の再反論


● 
以前宮台教授は、メディア悪影響の実証的データはないと
  断言していた。
  ところがブログでは、「悪影響を回避するなら
  まず本人要因視聴環境要因の制御を政策的に行うべき」
  と主張している。 (悪影響回避のための政策を認めている)

● 発言が矛盾している点はさておき、
  本人要因視聴環境要因の制御は可能かどうかの説明がなく、
  仮に不可能だとしたら無意味な主張でしかない。

● 発表当時とメディア環境が激変したクラッパー理論の限界や、
  本人要因環境要因の制御が副作用が小さい理由も説明していない。

● 政策をいうなら、クラッパー本人が未成年への性表現販売禁止を
  勧告した委員会のメンバーだった事実はどう説明するのか?




個人的には、
「コンテンツのバリエーションによって影響が異なるのは自明」
という宮台氏の主張はかなり問題があると感じます。


「悪影響がありそう、あるんじゃないか、あるに決まっている」 
というような先入観や印象を排除すべく、
規制反対派は悪影響論の学術的裏付けを
執拗に要求し続けたのではなかったのでしょうか?


表現のバリエーションによって悪影響に差が出るのが当然なら、
バリエーションに応じて表現を制御しようという動きが出たって
しょうがないと思うのですが。


結局、悪影響の要因が複数あるという事実から、


「複数あるのだから表現だけ規制しても意味がない」


という主張がでてくるのはある程度理解できますが、
それは悪影響を与える表現 = 臭いものにふたをする
行為に他ならず、


「悪影響を受ける要因が表現以外にも
  たくさんあるのだから、根本原因の表現を規制しないと
   解決にならない」



という主張がでてくるのもまた当然だと思います。


犯罪統計に表れるかどうかはともかく、
表現による悪影響は、表現規制によって達成するのが
根本的解決策として合理的です。


それが嫌なら、「表現による悪影響もやむを得ない」
という主張が広く社会の合意を得るような
政治的努力が必要になってくるでしょう。


「表現の自由」 を盾に取るのもいいですが、
規制反対派のそれはしばしば脅迫的な誇張を伴っており、
クラッパーの言を借りれば、、


そのような単純な図式で膨大な調査研究を

  覆い隠してはいけない



と言わざるを得ないでしょう。



                        (2011/6/25 entry)

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児童ポルノ規制による性犯罪の増加
      (web 魚拓)


上記リンクはランナー氏という管理人による、
統一協会に騙されない知識のホームページ
の一コンテンツとして、各国・各地域の性犯罪統計をもとに
「ポルノ規制が増えれば性犯罪も増える」 などと
思いっきりカタルシス理論を正当化しているサイトです。


データ関係はかなり豊富で、特に性犯罪件数のグラフに
表現規制に関する当時の状況を吹き出しでリンクさせるという手法は
ビジュアル面でもわかりやすく、
児ポ法や都条例関連スレッドなどではこれらのグラフがたびたび
規制反対派により引用されるなど重宝されており、
かなり有名なサイトであることは間違いないようです。


私がこのサイトを見つけたのは、2008年12月ごろのことです。
私が作成した英国強姦件数のグラフが引用されていたのですが、


   
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます



もともとこのグラフは 
「英国児ポ法で強姦件数が増加したという事実は無い」
と立証するための根拠として提示したものでした。
  (論証はこちら


ところが、このサイトではこのグラフにこんな解説がついていたので、
「この人は本当に私の論証部分を読んでいるのか?」
と驚いてしまいました。


イギリスでは「単純所持禁止」に向けた児童ポルノ規制の強化につれ
逆に犯罪が増えたようにも見えます。

 すなわち、イギリスは、児童ポルノ単純所持規制以前は
性犯罪が少なかったのに、、、
単純所持規制法成立に向けた規制強化につれて、
性犯罪が多くなってしまって、
また、法制定後は、更に性犯罪が多くなってしまって、
現在のイギリスの性犯罪はとても多くなってしまって、
残念な国になってしまっているようです。


(イギリスの児童ポルノ規制の関係者は、何が児童への性犯罪を
誘発するのかが分かっていなかったようです。
最近は、イギリスも、禁止施策が逆効果になる場合があると
気づき始めたようですが、、、)



この解説が誤謬だらけであることはこの後論証していきますが、
そもそもこの時点では、このサイトの最大の特徴である
統計グラフデータはまだ2つしか掲載されていませんでした。


(cache) 2008年12月27日時点の魚拓


これまた規制反対派の間では有名な管賀江留郎氏の
幼女レイプ被害者数統計 と、
私の作った英国強姦件数のグラフです。


そのあと、ランナー氏オリジナルのグラフが
次々と追加されていくことになるのですが、
このサイト最大の特徴である犯罪統計グラフ多用の構成は
どうも最初の2つのグラフからインスピレーションを受けたようです。


特に、表現規制の状況を吹き出しでリンクさせる手法は
どう見ても私のグラフを参考にしたと考えるほかはなく、
いうなれば


ランナー氏の妄想の肥大化の責任の一端は
私の作成したグラフにあるのではないか



という疑念すら生まれてくるのです。


となれば、私自身がこの手でランナー氏及び
彼の作ったサイトに洗脳されている規制反対派連中を
啓蒙すべく批判の論陣を張ることは
ある意味避けては通れぬ道なのではないかと思うわけです。



 
                (2011/6/28 entry)





★補記
 このサイトには、児童ポルノ規制による性犯罪の増加
 とは別に、怪しい児童ポルノ規制法案
 というページが存在します。後者は、前者の内容に加えて、規制推進派に対する
 陰謀論めいた主張が延々と語られています。
   (前者の記述はほぼそのまま重複して掲載されています)
 当初は後者を取り上げる予定でしたが、カタルシス説批判として取り上げるには
 余計な記述のない前者を取り上げる方が適当と考えましたので、
 文中リンクなどは全て前者のものを埋め込んであります。




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冒頭から破たんをきたすランナー氏の論理



間違いだらけのカタルシス理論




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児童ポルノ規制による性犯罪の増加
      (web 魚拓)


このサイトを開くと、まず最初にこんなことが書いてあります。



ポルノはワイセツ以外のもののことです。
ワイセツ物の表示はワイセツ物の陳列を
禁止する法律で禁止されていますから。

なんだかよく意味の分からない文章です。
「ワイセツ物は禁止されているから、ポルノはワイセツではない」
ということは、ランナー氏の定義する 「ポルノ」 とは
合法的に流通している表現である、という意味なのでしょうか?


とりあえず、ランナー氏はワイセツとポルノを分けて考えているようだ、
ということだけは分かります。
このページの上から 3/4 位のところに、こんなことも書いてあります。



ワイセツから芸術まで間のどこかの境に、
それ以上は人間性に害があって、それ以下は人間性にとって、
好ましい必要なものである、という境界があると思います。
 (その境界はポルノ表示の中では無く、
   ワイセツ表示の中に境界があるかもしれない)


 その境界以内のポルノは好ましく禁止してはいけないもので、
その境界の外のポルノ(ワイセツ表示?)は害があると思います。


 しかし、今行われているポルノ規制は、その境界が分からなくて、
好ましいものを禁止して、芸術や文化に近いものを
過剰に禁止することで人間性に害を与えている可能性もある
のではないかと考えます。


明確に定義したポルノ的要素の分類に基づき、人間性を冷静に科学的
にしっかり見た知見に基づき、愛情があるしっかりした施策
(何もしないことも施策の一つ)が行われることを望みます。


これを読むと、どうもランナー氏は、

ワイセツ物とは頒布罪(刑法175条)により禁止されているもので
人間性にとって害があるが、
流通が許されている性表現 (= ランナー氏が定義するポルノ) は
人間性にとって好ましく、規制すると害がある。


と考えているようなのです。
そして、このページにおいて様々なデータを引用して
徹頭徹尾 「ポルノ」 規制の有害性を主張しているわけですが、
これだけで、ランナー氏の主張が根底から論理破綻を
来していることは明らかです。


まず、ランナー氏の言う 「ワイセツ」 について、
「禁止されている」 と 「害がある」 の間に
どういう関係があるのかが不明です。


ここからはおそらく、「害があるから禁止されている」 という
因果関係しか導けないでしょう。


しかし、175条に抵触する表現は、害があるという客観的根拠に基づいて
摘発されているわけではありません。
それは警察の検挙方針に基づき、恣意的かつ見せしめ的に
摘発されているもので、しかもその基準は時代時代の風潮により変化し、
過去に違法であったものが現在では堂々と流通が許されるなど、
かなり柔軟、悪く言えばいい加減に運用されているものなのです。


また、ランナー氏は児童ポルノ法や青少年保護条例による表現規制は
有害であると主張しますが、どうして刑法175条による表現規制が
有益 (もしくは無害) なのかを説明していません。


ランナー氏の言う 「ポルノ」 は、検挙方針や
時代風潮の変化により、いつだって違法表現 (=ワイセツ) に
認定される可能性はあります。


刑法175条も児ポ法や青少年条例も、国家権力の恣意によって
制定・運用されているのは同じなのですから、
ランナー氏は全ての表現規制法令を有益
 (もしくは無害) であると評価しないと、
もしくは全て有害であると主張しないと矛盾してしまいます。


おまけに、ランナー氏は
「ワイセツから芸術まで間のどこかに、有害と有益の境界がある」
などと言いますが、それはどのような
 「明確に定義したポルノ的要素の分類」
「人間性を冷静に科学的にしっかり見た知見」

に基づいているというのでしょうか?


これまた何の説明もなく、ただ単にその時の気分だけで
適当なことを言ってるんじゃないのか?と訝ってしまいます。


ひょっとしてランナー氏は、


「刑法175条は自分が生まれるかなり前からある法律だから諦めもつくが、
 児ポ法や青少年条例のような最近の法律は
  今までの自分の生活に変化を要求するので気に食わない」



といった、まるで校則の改定に反抗する中学生のような
幼稚な感情論で表現規制反対を主張しているのでしょうか?


もうひとつ考えられるのは、
「刑法175条を有害とすると、自説に都合が悪い」
という理由があるのではないか?という疑念です。


ランナー氏はなんとかして、表現規制と性犯罪件数の間に
因果関係があると立証したいわけです。
最近になってできた表現規制法であれば、
「規制が強姦件数を増やした」 という主張をこじつけれても、
そこに戦前から施行されている刑法175条を含めてしまうと、
日本では戦後ある時期から強姦件数が激減した事実は明白ですから、
表現規制になんら影響が無いことがばれてしまいます。


ランナー氏の主張を見る限り、「ポルノ≠ワイセツ」説には
そのような理由が働いているとしか考えようがありません。


そして、その感情論または政治的策略を正当化すべく、
「人間性を冷静に科学的にしっかり見た知見に基づき」
などと称してデタラメなデータの切り貼りをやっているわけです。



                       (2011/7/4 entry)



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カタルシス理論への固執が招いた自己否定 (というか自爆)


間違いだらけのカタルシス理論



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児童ポルノ規制による性犯罪の増加
      (web 魚拓)


次に、上から5行目に別ページへのリンクが張ってある
ランナー氏の規制に対する考えを見てみます。




規制に関する私の考え
      (web 魚拓)

思春期の青少年に対して性の扱いを一歩誤れば
大変な害を及ぼすと思います。
一番害を与えるのは、思春期の青年に「性はいかがわしいもの」
という思いを与えることだろうと思います。
そういうふうに思うようになった青少年は、
性をとても乱暴に扱うようになると思うからです。


それで、大人が、「性はいかがわしいから取り締まる」と言ったら、
思春期の青少年に与える害ははなはだしく大きいと思います。


(中略)


機械的に性表現を規制するのは、
性に関して無知な青少年に、
先ず、「性は全ていかがわしい」と先入観を与えることになると思います。
そうなれば、青少年にとって、性について考える事は
いかがわしい行為になってしまい、
性と他のとても悪い事(暴力など)との区別がつかなくなる
害悪が与えられるのではないかと思います。


 (中略)


そうでは無くて、性はいかがわしくなく、
性とは、性の相手を思いやるように成長するべきものであって、
大切なものであると教えることが大切と思っています。


これを見る限り、ランナー氏によるカタルシス理論肯定は、


「表現に接することにより衝動(性欲)が減少する」


という一般的なものとはやや異なり、


「性的自由度が大きい社会環境下では、性的秩序が向上する」


というような、フリーセックス思想によく似た構造を
持っていることがわかります。


ここでいうフリーセックスとは、俗にイメージされがちな
「性的放縦の肯定」 といった文脈ではなく、
ジェンダーフリー思想に基づく 「性別からの自由」
「性的自己決定権の自由・自立・尊重」 を重視した
セクシュアリティのありようについての思想を指します。


そして、そのような思想をもっともよく体現している国家としては、
性教育先進国として知られるスウェーデンが挙げられます。


[AML 1385] なぜ、性教育が必要なのか?
      (web 魚拓)
西欧諸国では早くから性教育の必要性と重要性が
指摘されており、例えばスウェーデンでは、
1955年に性教育の義務化が実施され、
1975年からは人間関係の教育という名称で、
具体的実践的な性教育の取組がなされるようになった。


“人間と性”教育研究協議会/Seikyokyo
      (web 魚拓)
欧米では、大人には性の表現の自由や「見る自由」も認めていますが、
見たくない女性や見せたくない子どもたちの「目にとまらない自由」も
確保するだけに成熟した社会なのです。
いわゆるゾーニング(棲み分け)ができているのです。

そして、スウェーデンのように性教育が当然の国では、
セックス産業が見事に衰退しています。
大切なことは、ポルノを法律で取り締まることではなく、
それを批判し選択できる力を子どもの頃から育む
性教育の確立なのです。


スウェーデンでは大臣の半数と、国会議員の四割が女性ですが、
この国は今から六〇年前から性教育が女性解放の政策と一体となって
大きな役割を果たしてきたのです。


小学校中学年用 「性の教育」
      (web 魚拓)
スウェーデンの「性」の教育で、くり返し強調されるのは、
セックスをする時には、相手をとても大事に
しなけれはいけないということである
が、
今日の日本のように、一方の性がおとしめられたり、
強者が弱者の性をないがしろにしたりするような“やる・やられる”式の
歪められた性情報が氾濫している中にあっては、
両性の平等と人権に視点をあてた「性」の教育が、
ますます必要となってくるのである。


このように、ランナー氏の考えとスウェーデンの性教育に
対する考え方はかなりの部分で一致しています。
 (上記以外でスウェーデンの性教育の実態に関する参考リンクを
   最後の方で紹介しておきます)


ところが、ランナー氏はスウェーデンに関してこんなグラフを
サイトに掲載し、


スウェーデンでも、以下の統計のように、ポルノを
規制すればするほど、性犯罪が増えて来たように見えます。



と、スウェーデンの性に対する社会の在り方を非難しています。


swe

   
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます




そして、


何にしても、日本のアニメまでブロッキングするようなことは
しない方が良いのではないかとも考えます



などと、あたかも行き過ぎた児ポ規制が性犯罪を増やした、
といわんばかりの見解を披露しています。


スウェーデンと言えば、有名な1996年ストックホルム会議や
シルビア王妃によるアニメ・漫画批判など、
児童ポルノ規制に熱心な国というイメージがありますが、
実際にはイギリスやカナダのような規制先進国に比べて
それほど盛んではないという事実は、
ランナー氏作成のグラフにもはっきりと表れています。


上記グラフでは吹き出しでいろいろと規制の動きが書いてありますが、
ほとんどがアメリカやインターポール、国連の事例であって
肝心のスウェーデンの規制は児童ポルノ関連の2つだけ、
単純所持違法化が1999年というのも決して早い方ではありません。
 (デュトゥルー事件は1996年にベルギーで起こっています)
上記引用にもあったように、スウェーデンでは
セックス産業は盛んではなく、したがって表現規制も
それほど行われていないのです。


「強姦件数が急増している国は、表現規制も厳しい国ということに
なっていなくてはならない」 
と頭から信じ込んでいる
ランナー氏は、仕方なくアメリカやベルギーの事例を引っ張りだすという
強引な辻褄あわせをせざるを得なかったのでしょう。


スウェーデンの表現規制は厳しいものではなく、
したがって強姦件数急増の原因は
明らかに表現規制以外の所にあるのは間違いありません。


そして、ランナー氏による統計解釈の方法にのっとれば、
強姦件数の増加と、スウェーデンが国家として取り組んでいる
性教育の在り方との間にも因果関係が存在する、
ということを認めなければなりません。


カタルシス理論の論証に固執するあまり、
 (しかもその論証自体が間違っている)
自分の 「規制に対する考え」 を体現している
スウェーデンを全否定してしまったという事実を、
ランナー氏はどれほど自覚しているのでしょうか?



さて、最初の5行だけでも2つの大きな誤謬が存在するこのサイトですが、
このようなランナー氏の論理破綻は他にも沢山あり、
いちいち指摘していたらきりがありません。


よって、これ以降は、カタルシス理論を肯定している部分に
絞って批判していこうと思います。


 


              (2011/7/9 entry)




★スウェーデンの性教育事情 参考リンク

yamayuu18.tumblr
      (web 魚拓)

スウェーデンの性教育①|Sayaka's Lovely Life
      (web 魚拓)

思春期の性教育における男女別学習と男女合同学習の意味
      (web 魚拓)

スウェーデンの性教育報告 そのⅠ
      (web 魚拓)

スウェーデンの性教育報告 そのⅡ
      (web 魚拓)



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犯罪の原因は表現規制や性表現減少だけなのか?



間違いだらけのカタルシス理論





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児童ポルノ規制による性犯罪の増加
      (web 魚拓)


このサイトに大量に置いてある、吹き出し付きの
犯罪統計グラフと管理人・ランナー氏のコメントを
いくつか引用して検討してみます。


Rape-Japan0

   
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます (以下のグラフも同様)



G-RapeC





















Rape-Japan0


★ランナー氏のコメント


1955年のマンガ規制の動きにともない、
 逆に、性犯罪が倍増したようにも見える。
1969年の少女ヌード写真集発売に伴い、性犯罪が減ったようにも見える。
1970年の「ハレンチ学園」「アポロの歌」などへの
 マンガ性表現規制にともない、逆に性犯罪が増えたようにも見える。
1970~1980年代のポルノブームあるいは性表現マンガが
 性犯罪を減らしたようにも見える。
1991年以降の「有害コミック騒動」やその他の一連の規制により、
 性犯罪の低下傾向がストップしたようにも見える。
1999年の「児童ポルノ規制法」の制定に至るやその他の一連の
 規制により、性犯罪の低下傾向がストップしたようにも見える。


Rape-US


★ランナー氏のコメント


これらのデータからは、カチンスキーが結論付けたように、
「成人についてはポルノをほぼ全面的に解禁すべきである」
と考えた方が妥当なように考えられます。
しかし、性犯罪とポルノの普及に負の相関が強いということは
わかりましたが、
その理論的根拠は、まだわかりません。


普遍的な真実として認識するには、理論的裏付けが必要と思います。
これらのデータだけからは、普遍的な真実として言えることは、
「ポルノによっては、本質的には、性犯罪は誘発されない」ということまでだと思います。
特に、私の調べた限りでは、社会学の研究では、
ポルノ普及と性犯罪の相関はなさそうです。


 一方、社会学の研究者の最近の研究は、すべて、
「性に関する規制を強化すると、性に関心を増すだけであり、
欲求不満を生じ、ひいては攻撃的な行動に結びつく」
と報告していますので、「性に関する規制の強化」の方が、
性犯罪の増加の大きな要因ではないかと考えます。




まずこれを見て直感的に思い浮かぶのは、

性犯罪の原因は性表現の流通量減少や規制だけなのか?

という素朴かつ常識的な疑問です。

一般論で言えば、犯罪の原因とされるものは


社会的要因(失業、貧困、経済的不平等、治安状況、移民流入)
生来的要因(性別、知能、家系、遺伝、染色体やホルモンの異常、
         脳神経の機能障害)
分化的接触(社会学習的に犯罪性向を獲得する)



などが多岐かつ複雑に絡み合い相互に作用を及ぼしています。


もちろん、法改正や警察の検挙方針、認知傾向なども
統計に大きな影響を及ぼします。


メディアの影響は分化的接触に含まれますが、
統計からその他の要因をすべて排除して
単一にメディアの影響のみを抽出するのは困難で、
それが影響力が疑問視されているカタルシス効果ではなおさらです。


原因抽出だけでは根本的解決にならないからこそ、
犯罪予防学は犯罪原因の追究から
犯罪機会減少論へと主軸を移していったわけです。



ランナー氏の数々のグラフの最大の問題点は、
そのような原因抽出の努力を一切欠いたまま、
性犯罪件数の推移は規制の有無や
性表現流通量に直結していると見せかける、
粗雑で単純化されすぎた印象操作の手法にあるのです。



また、ランナー氏は
性犯罪が倍増したようにも見える
性犯罪が減ったようにも見える

などなど、やたらと「見える」「見えます」を連発して
あたかも 「自分は断定してない。見えるとしか書いてない」
といわんばかりですが、これはいかにも姑息なエクスキューズです。


ランナー氏が表現規制と犯罪増加を因果関係で
結び付けたがっているのは見え見えのバレバレで、


普遍的な真実として認識するには、理論的裏付けが必要と思います。


などと、自分の主張に理論的裏付けが全く無いという事実を認めていながら、
同じ口で


「性に関する規制の強化」が、性犯罪の増加の大きな要因


欧米の児童ポルノ規制は、
性というものをしっかり見極めず戦う無知な戦いであるため、
自国内に性犯罪を誘発するという被害を受けている


現在のイギリスは規制強化につれて、性犯罪が多くなってしまって、
残念な国になってしまっている
(いずれも要約)


といった本音をさらけ出しています。


よしんば、ランナー氏が仮に規制と犯罪の因果関係に
懐疑的な立場であったとしても、
「誤解してください」 といわんばかりに
規制があっただのポルノが減っただのといった吹き出しを加えた
統計グラフをこれでもかと自サイトに掲載し、


社会学の研究者の最近の研究は、すべて、
「性に関する規制を強化すると、性に関心を増すだけであり、欲求不満を生じ、
ひいては攻撃的な行動に結びつく」と報告しています



などとネタ元不明の新強力効果モデルを披露し、
それを真に受けた純粋な規制反対信者が続出した挙句
デマがネット上に拡散され続けているわけですから、
間違いは間違いであるとどこかで誰かが
きちんと言っておく必要があると思います。





★ 参考リンク

犯罪予防理論の潮流 (PDF)
断想 : 犯罪の原因とはなんだろう
      (web 魚拓)


            (2011/7/13 entry)



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こんなグラフが許されるなら何だって印象操作できる!



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児童ポルノ規制による性犯罪の増加
      (web 魚拓)


このサイトで一番最初に出てくるこのグラフに関して、
もう一度検証してみます。


Rape-Japan0
       
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます



強姦認知件数の推移に沿って、主に性表現流通や規制関係の
動向を吹き出し内のコメントでリンクさせ、何も知らない人、
もしくは何が何でも表現規制は悪であると信じ込みたい人
が見ると、「表現を規制するとろくなことにならないんだ」 という
印象を与えるような作りになっています。
ランナー氏作成のグラフは、ほぼ一貫してこの手法が採用されています。


このランナー氏の手法には大きな問題があると考えます。
確かに、吹き出し内の動向や事象に関してウソは書いてないのかも
知れません。
しかし、その年その年にはそれぞれ他にもいろんなことが
起こっていたはずなのですが、それらのデータをどういう基準で
取捨選択しているのかが不明です。
まあおそらく、規制反対派に都合のいいデータだけを
切り貼りしているんだろうな
という想像は容易に付きますけれど。


こういう、恣意的なデータの提示による印象操作は
もっともお手軽なプロパガンダの典型的な手法の一つで、
ここに書いてある事は客観的事実というよりは
ランナー氏を含む規制反対派諸氏の単なる願望に過ぎないと
考える方が妥当です。

そこでちょっと思い立ったのですが、

規制反対派に都合のいいデータ提示が可能なら、
規制推進派に都合のいいデータ提示も可能


なのでは無いかということで、私もひとつ同じように作ってみました。


ninchi_kensuu
   
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます


そして、こんなコメントを付け加えてみます。


1964年の都条例制定から始まる俗悪マンガへの
社会の非難が高まるにつれて、強姦件数が減っていったように見えます。


1980年代、ロリコン漫画誌やアダルトゲームの登場で、
減少傾向に歯止めがかかったように見えます。


1996年、35万人の宮崎勤がコミケに集結したのをきっかけに、
強姦件数が増加したように見えます。


1999年の児ポ法制定にあたり、一部抵抗勢力の妨害により、
単純所持規制や創作物規制が除外され、
本来なら摘発されて刑務所に入るべき変質者連中が
野に放たれた結果、強姦件数が増加したように見えます。


2004年に児ポ法が厳罰化され、日本ユニセフ協会が
「ストップ子どもポルノキャンペーン」 を展開したことで
強姦件数が減少したように見えます。


カリスマ小児性愛者小林薫の死刑判決が確定し、
野に放たれていた変質者がビビッて自粛したことで
強姦件数が減少したように見えます。



強く念を押しておきますが、

私は完全にネタ感覚で
   このグラフを作りました。


こういう統計解釈が正しいとは全く思っていません。
こう書いておかないと、 「nemo がデンパを飛ばした!」 とか、
言う連中が出てくることが予想されますし、
2ch にグラフの直リンを張られる可能性も考えて
グラフ自体にネタであることを示唆しています。


吹き出し内のコメントは、おおむね事実を記述しています。
ただし、当然のことながら意図的な誇張や恣意的表現や
データ選択における偏向がふんだんに含まれています。


たとえば、無罪判決の出た愛のコリーダ裁判は
除外する一方で、無修正版の公開は強姦件数増加の
根拠として提示してますし、
メープルソープ裁判の最高裁判決は2008年です。
また、アダルトビデオの全盛期はもっと早い時期に始まっていますし、
コミケはその後も入場者数を増やし続けています。


そのような取捨選択の基準は勿論、
規制推進の立場から見て都合が良いか悪いかです。
そして、その手法はランナー氏作成のグラフのそれを
まるっきり模倣したものであることを強調しておきます。


繰り返しますが、このような手法は統計学的知見の名に
一切値しません。
単なる個人的願望を恣意的なデータ取捨選択で
客観的に見えるようもっともらしく粉飾した
悪質なデマゴーグに過ぎないのです。


          (2011/7/17 entry)




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「マドンナがアメリカの性犯罪を減少させた」 という妄想




間違いだらけのカタルシス理論



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犯罪大国とのイメージが強かったアメリカの
犯罪件数が1990年代から減少傾向を辿った
原因については、諸説あります。


1972-2010 アメリカの殺人・強盗事件発生率

1972-2010 アメリカ殺人と強盗事件発生率



たとえば、
BBC News - US crime figures: Why the drop?
によると、

1.オバマ効果
2.クラック(コカイン)需要の減少
3.自動車盗難防止ネットワークの構築
4.CompStat (犯罪ピークを正確に指摘するマッピングプロジェクト)
5.1970年代の中絶合法化
6.刑務所の増設により多くの犯罪者が収監された
7.有鉛ガソリン規制による血中鉛濃度低下
8.ベビーブーム世代の成長による犯罪適齢期人口の減少
9.テレビゲームの普及により、若者が外出しなくなった
10.カメラ付き携帯電話の普及


などが原因として挙げられています。
割れ窓理論、ゼロ・トーレランス(厳罰主義)の導入が
根拠とされることも多いようです。(上記記事では懐疑的)


割れ窓理論 - Wikipedia


アメリカでは強姦事件発生率もほぼ同じような
増加・減少推移を辿っているわけですが、


児童ポルノ規制による性犯罪の増加
      (web 魚拓)


このサイトの管理人であるランナー氏は、
強姦事件発生率の推移に関して、
どのような原因があったと考えているのでしょうか?


下にあるのは、上記リンクの中段に掲載されているグラフです。

Rape-US
     
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます


1992年ごろ、ポルノ女優のマドンナのポルノビデオが
ヒットしたことにより、強姦発生率が減少した



ということを主張したいようです。


アメリカの犯罪減少傾向において様々な要因が複合していると
世界的に考えられている中にあって、たった一本のポルノビデオが
強姦発生率を減少させることに成功した、と主張する
ランナー氏の大胆かつユニークな発想に驚かされてしまいます。


この人は本気の本気で、性表現流通量の多寡のみが
性犯罪発生率に影響を与える、と信じ込んでいるようです。


それはさておき、この吹き出し内のコメントを見ると、
直ちに2つの素朴な疑問が浮かんできます。


ポルノ女優のマドンナとは一体どこの誰で、
ヒットしたビデオとは何という作品なのでしょうか?



我々がマドンナと聞いてすぐに思い浮かぶのは、
アメリカのポップシンガーであるあの有名なマドンナでしょう。
 (彼女は無名時代にポルノ映画に出演した過去があります)


マドンナという芸名自体は割とありきたりにも思えるので、
同じような名前のポルノ女優がいるかもと思って調べてみました。


Category:アメリカ合衆国のポルノ女優 - Wikipedia


Category:American pornographic film actors
- Wikipedia, the free encyclopedia



下のリンクは英語版の wikipedia で、リストは4ページ分あります。
これを見る限りでは、マドンナ何某といった名前の女優は
掲載されていません。ヒットしたビデオの女優なら
必ず wikipedia には名前が出ているはずなので、
ここのリストにないということは、ランナー氏の言うマドンナとは
やっぱりあの有名なマドンナであると考えて間違いでは無いでしょう。


ということは、ヒットしたビデオ作品とは、
1979年に製作された 「A Certain Sacrifice」 と特定されます。
 (邦題 「堕天使」 「レイプ/マドンナ イン セックス」 など複数)


しかしここで、新たな疑問が湧き上がってきます。


この映画が1992年にヒットしたという事実は
    あるのでしょうか?



A Certain Sacrifice - Wikipedia, the free encyclopedia


これを見ると、 「A Certain Sacrifice」 は1979年から
2年の製作期間を経て完成したものの、1985年まで
公開されなかったと書いてあります。


1984年に 「Like a virgin」 などでブレイクしたマドンナの
名声を利用してビデオが発売されたことで
やっと陽の目を見た作品だということなのですが、
何でそんな映画が1992年になって突然ヒットしだすのでしょうか?


allcinema を見ると、1992年に音楽を入れ直して
再編集されたとありますが、このバージョンが
アメリカの強姦発生率を減少させるほどに
ヒットしたという事なのでしょうか?
それは、どういうソースに基づいた主張なのでしょうか?


この時期のマドンナをポルノ女優とカテゴライズするのも
余りにも強引かつ無理くりとの印象は否めません。


1992年時点での女優としてのマドンナのフィルモグラフィを見ても、
「A Certain Sacrifice」 以外に、いかなる基準をもってしても
ポルノ映画と位置づけられる作品は一つもありません。


マドンナ(Madonna) のプロフィール - allcinema
Madonna - IMDb


そのような活動歴を知ってか知らずか
堂々と 「ポルノ女優のマドンナ」 などと記述するなどとは、
「明確に定義したポルノ的要素の分類」 を要求する
人間がやっていいことなんでしょうか?


むしろ、この年に彼女は 「SEX by Madonna」 という
ヌード写真集を発表し、これは大ヒットしていますが、
どうせマドンナを引き合いに出すなら、
こっちを根拠に据えた方がまだなんぼかましかと思うんですが、
この人のやることはデータの取捨選択から何から
よくわからないことだらけです。

さらにこのグラフには、


・ アメリカでは強姦発生率は60年代中ごろからすでに
  増加傾向にあった
・ 世界的な性表現規制緩和の潮流の中で
  1970年代にハードコア・ポルノが台頭
・ 1980年代VHSの普及によりポルノ映画産業は飛躍的に成長


といった重要な項目が抜け落ちています。
そこで、これらの項目を付け加えたグラフを作成して
ランナー氏のグラフに重ね合わせてみましたのでご覧ください。

Rape-US7
     
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます



アメリカ強姦発生率のデータはこちらを参照しました。



こうやって見ると、ランナー氏の意図とは全くちがった
構図が浮かび上がってくるのではないかと思います。


ところで、この記事をご覧になっている方の中には、
今回取り上げたランナー氏の統計解釈に関して、
「そんなのを真に受けるバカな規制反対派はほとんどいない!」
と主張する向きもあるかもしれません。
私もできればそう信じたいところなのですが、
実はそうバカにできたものでも無いようなのです。


法と性のパラドックス


上記リンクは、様々な統計データや法知識を駆使して表現規制に
懐疑的な主張を行っているサイトです。
突っ込みどころがないわけではありませんが、
感情的な煽りなどは一切なく淡々かつ整然と
論理的な解釈を述べており、なんといってもサイトの作りが
とてもていねいに設計されているので、
かなり理知的な印象を受けてしまうのは確かです。


ところが、この管理人さんは 「参 諸国の性事情から見るパラドックス」 で
例のマドンナグラフを何の疑問を差し挟むことなく
そっくりそのまま引用しちゃってます。
まことに残念ながらこの一点で、このサイトの信用と名誉は
地に落ちたと言わざるを得ません。


こういうのを見ても、ランナー氏の一連のグラフの
影響力は侮れないものがあると思うわけです。


ちなみに、ランナー氏のグラフ中にあるランドスライド社というのは
大規模な児童ポルノサイトを運営していたグループの事で、
2000年に摘発されています。


大規模な児童ポルノサイト運営者が起訴される|WIRED VISION News (beta)


こういうのを見ると私はいつも規制反対派諸氏に
問いかけたくなるのですが、児童ポルノが規制されたからと言って、
なんで全年齢の強姦被害件数が増加するのでしょうか?


実際に議論しても、規制反対派諸氏はこのような私の疑問に対し、
ほぼ例外なく沈黙を守るというパターンを繰り返すのみです。


「ロリコンはエサを失ったら大人子供見境なく
 襲いかかるケダモノ」 というなら話は分かりますが、
たぶんそういうことを言いたいのではないと思うので、ランナー氏含めた
規制反対派諸氏には真摯な回答を期待したいと思ってます。



 

             (2011/7/28 entry)



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captain_nemo_1982 at 19:30|PermalinkComments(1)TrackBack(0)