2013年05月04日

海外の冤罪事例を盾に取った規制反対言論は意味がない


単純所持規制の問題点について


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表題の件に関して、内閣府スレ★51 にも書き込んだが、
こちらにも同内容の主張を加筆・修正して再掲する。

フリードマン事件やベネディクト事件などの
英米の冤罪事例を盾にとって、
「日本でも単純所持を規制したら同じような冤罪が
 多発する」 などといった危機感を煽る
規制反対意見は根強く存在する。

2008-02-24 - 「反ヲタク国会議員リスト」メモ 参考資料
      (web 魚拓)
↑ に代表的な冤罪事例の一覧あり

PCウィルスによる、児童ポルノ冤罪 (和訳)

先日も、スラッシュ・ドット・ジャパンに
こんな記事が掲載された。

ワイヤレスルータにパスワードをかけず、
児童ポルノ所持容疑で逮捕される

      (web 魚拓)
ある Anonymous Coward 曰く、
法を犯した覚えが何一つなくともルータの設定一つで
逮捕される恐れがある世の中になってきているようで、
そんな不幸な男性の話が
本家 /. 記事にて紹介されている (msnbc.com の記事) 。

米ニューヨーク在住の男性はある朝、
自宅に押し掛けてきた連邦捜査員に武器をも向けられ
床に伏せさせられたとのこと。
捜査員から「ペド野郎 !」と罵声を浴びせられるなど、
突然の出来事に驚きながらも男性は
すぐに原因に思い当たったそうだ。

この男性、最近設置したワイヤレスルータの
パスワード (暗号化キー ?) 設定がややこしく、
パスワードを掛けない状態にしてしまったそうで、
誰かがその接続を使ってポルノを
ダウンロードしたのに違いないと確信したという。
実際コンピュータなどが押収され
捜査が進められたところ 3 日後には彼の容疑も晴れ、
1 週間後には近所の 25 歳の男性が
真犯人として逮捕されたとのこと。

なお、当局は「ルータにはパスワードをかけるべし」
とアドバイスしているとのことだ。


で、その記事のコメント欄を見ていたら、
「アメリカでは逮捕状は裁判所が出すとは限らない」 
というような書き込みがあり、
ちょっと気になったのでアメリカの刑事訴訟手続きが
どうなってるのか調べてみた。

アメリカの刑事手続素描(1) (PDF注意)

これを読むと、アメリカの逮捕では捜査官による無令状逮捕が
95%を占め、かなり広範に認められ、
日常的な捜査手段として、なおかつ捜査官にとって
非常に有効な武器として機能しているらしい事がわかる。
 (もちろん、現行犯逮捕のような緊急逮捕以外での事件も含めて)

すなわち、現場の捜査官に捜査権限においてかなりのフリーハンドが
与えられており、
事実、アメリカでは日本に比べて逮捕そのものは簡単に行われる。
  (日本の場合、逮捕令状請求は警視正 警部以上の
     上級警察官に限られる。刑事訴訟法第199条の2

その後、治安判事が逮捕要件を審査して令状を発布するわけだが、
これは非常に形式的なもので、実質フリーパスに近い。

そして、原則として被疑者は逮捕後48時間以内に
裁判所に出頭しなければならない。
もっとも、被疑者は自己防御のための様々な権利を告知され、
保釈条件もかなり緩和されており、
裁判そのものも迅速に行われるため、
冤罪逮捕による被疑者の権利が大きく損なわれることは無く、
このような訴訟手続きが社会的に問題視されることもない。


そして、問題はどのくらいの比率で冤罪が起きるかだが、
「アメリカ 有罪率」 で検索するところによれば、
陪審員裁判における有罪率は70~80%、
日米間の計算方法の違いを考慮しても大体これくらいの幅で
落ち着くものと推測できる。
逆に言えば、冤罪率はどの種類の犯罪でも20~30%の
比率を占めているということであり、
アメリカ社会はそのような司法のありようを正当であるとして
容認していることがわかる。
 (ここでは冤罪を、裁判により無罪判決がでた案件であると
   定義しておく)

乱暴な言い方をすれば、アメリカの捜査官は
20~30%の冤罪は最初から想定したうえで
令状なしに独断で逮捕権を行使していると
いうことだ。


ことここに至って、規制反対派による

  「英米の冤罪事件を例にとって規制反対の根拠とする」

という主張の欺瞞性が明白に浮き彫りになる。
 (イギリスの冤罪率もアメリカと同様かそれ以上)

アメリカでは、捜査官によって嫌疑がかけられた場合は
被疑者の起訴事実を
司法が判断するという制度が広く定着しており、
それゆえに無罪判決も多く出るし、被告人の権利も保障されており、
そのような訴訟手続きのありようを社会が容認し、支持している。

むしろ、日本では検察が有罪確実の案件しか立件せず、
裁判所はほぼそれを追認することがほとんどで
有罪率は99%を常に超えており、
これではまるで有罪無罪を検察が決めているのも同じであり、
このような司法制度の在り方こそが、三権分立の体を為していないと
批判されるゆえんでもあるのだ。


すなわち、日本と英米とでは冤罪による考え方が全然違うのであって、
全然違うものをいっしょくたにして
「外国では冤罪が起きているから日本でも同様に危険」
などと吹聴しても何の意味もないのである。




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captain_nemo_1982 at 15:30│Comments(0)TrackBack(0) 単純所持規制の問題点について 

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