2013年04月16日
「マドンナがアメリカの性犯罪を減少させた」 という妄想
犯罪大国とのイメージが強かったアメリカの
犯罪件数が1990年代から減少傾向を辿った
原因については、諸説あります。
1972-2010 アメリカの殺人・強盗事件発生率
たとえば、
BBC News - US crime figures: Why the drop?
によると、
1.オバマ効果 2.クラック(コカイン)需要の減少 3.自動車盗難防止ネットワークの構築 4.CompStat (犯罪ピークを正確に指摘するマッピングプロジェクト) 5.1970年代の中絶合法化 6.刑務所の増設により多くの犯罪者が収監された 7.有鉛ガソリン規制による血中鉛濃度低下 8.ベビーブーム世代の成長による犯罪適齢期人口の減少 9.テレビゲームの普及により、若者が外出しなくなった 10.カメラ付き携帯電話の普及 |
などが原因として挙げられています。
割れ窓理論、ゼロ・トーレランス(厳罰主義)の導入が
根拠とされることも多いようです。(上記記事では懐疑的)
割れ窓理論 - Wikipedia
アメリカでは強姦事件発生率もほぼ同じような
増加・減少推移を辿っているわけですが、
児童ポルノ規制による性犯罪の増加
(web 魚拓)
このサイトの管理人であるランナー氏は、
強姦事件発生率の推移に関して、
どのような原因があったと考えているのでしょうか?
下にあるのは、上記リンクの中段に掲載されているグラフです。
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます
1992年ごろ、ポルノ女優のマドンナのポルノビデオが
ヒットしたことにより、強姦発生率が減少した
ということを主張したいようです。
アメリカの犯罪減少傾向において様々な要因が複合していると
世界的に考えられている中にあって、たった一本のポルノビデオが
強姦発生率を減少させることに成功した、と主張する
ランナー氏の大胆かつユニークな発想に驚かされてしまいます。
この人は本気の本気で、性表現流通量の多寡のみが
性犯罪発生率に影響を与える、と信じ込んでいるようです。
それはさておき、この吹き出し内のコメントを見ると、
直ちに2つの素朴な疑問が浮かんできます。
ポルノ女優のマドンナとは一体どこの誰で、
ヒットしたビデオとは何という作品なのでしょうか?
我々がマドンナと聞いてすぐに思い浮かぶのは、
アメリカのポップシンガーであるあの有名なマドンナでしょう。
(彼女は無名時代にポルノ映画に出演した過去があります)
マドンナという芸名自体は割とありきたりにも思えるので、
同じような名前のポルノ女優がいるかもと思って調べてみました。
Category:アメリカ合衆国のポルノ女優 - Wikipedia
Category:American pornographic film actors
- Wikipedia, the free encyclopedia
下のリンクは英語版の wikipedia で、リストは4ページ分あります。
これを見る限りでは、マドンナ何某といった名前の女優は
掲載されていません。ヒットしたビデオの女優なら
必ず wikipedia には名前が出ているはずなので、
ここのリストにないということは、ランナー氏の言うマドンナとは
やっぱりあの有名なマドンナであると考えて間違いでは無いでしょう。
ということは、ヒットしたビデオ作品とは、
1979年に製作された 「A Certain Sacrifice」 と特定されます。
(邦題 「堕天使」 「レイプ/マドンナ イン セックス」 など複数)
しかしここで、新たな疑問が湧き上がってきます。
この映画が1992年にヒットしたという事実は
あるのでしょうか?
A Certain Sacrifice - Wikipedia, the free encyclopedia
これを見ると、 「A Certain Sacrifice」 は1979年から
2年の製作期間を経て完成したものの、1985年まで
公開されなかったと書いてあります。
1984年に 「Like a virgin」 などでブレイクしたマドンナの
名声を利用してビデオが発売されたことで
やっと陽の目を見た作品だということなのですが、
何でそんな映画が1992年になって突然ヒットしだすのでしょうか?
allcinema を見ると、1992年に音楽を入れ直して
再編集されたとありますが、このバージョンが
アメリカの強姦発生率を減少させるほどに
ヒットしたという事なのでしょうか?
それは、どういうソースに基づいた主張なのでしょうか?
この時期のマドンナをポルノ女優とカテゴライズするのも
余りにも強引かつ無理くりとの印象は否めません。
1992年時点での女優としてのマドンナのフィルモグラフィを見ても、
「A Certain Sacrifice」 以外に、いかなる基準をもってしても
ポルノ映画と位置づけられる作品は一つもありません。
マドンナ(Madonna) のプロフィール - allcinema
Madonna - IMDb
そのような活動歴を知ってか知らずか
堂々と 「ポルノ女優のマドンナ」 などと記述するなどとは、
「明確に定義したポルノ的要素の分類」 を要求する
人間がやっていいことなんでしょうか?
むしろ、この年に彼女は 「SEX by Madonna」 という
ヌード写真集を発表し、これは大ヒットしていますが、
どうせマドンナを引き合いに出すなら、
こっちを根拠に据えた方がまだなんぼかましかと思うんですが、
この人のやることはデータの取捨選択から何から
よくわからないことだらけです。
さらにこのグラフには、
・ アメリカでは強姦発生率は60年代中ごろからすでに
増加傾向にあった
・ 世界的な性表現規制緩和の潮流の中で
1970年代にハードコア・ポルノが台頭
・ 1980年代VHSの普及によりポルノ映画産業は飛躍的に成長
といった重要な項目が抜け落ちています。
そこで、これらの項目を付け加えたグラフを作成して
ランナー氏のグラフに重ね合わせてみましたのでご覧ください。
画像をクリックすると大きな画像が別画面で開きます
アメリカ強姦発生率のデータはこちらを参照しました。
こうやって見ると、ランナー氏の意図とは全くちがった
構図が浮かび上がってくるのではないかと思います。
ところで、この記事をご覧になっている方の中には、
今回取り上げたランナー氏の統計解釈に関して、
「そんなのを真に受けるバカな規制反対派はほとんどいない!」
と主張する向きもあるかもしれません。
私もできればそう信じたいところなのですが、
実はそうバカにできたものでも無いようなのです。
法と性のパラドックス
上記リンクは、様々な統計データや法知識を駆使して表現規制に
懐疑的な主張を行っているサイトです。
突っ込みどころがないわけではありませんが、
感情的な煽りなどは一切なく淡々かつ整然と
論理的な解釈を述べており、なんといってもサイトの作りが
とてもていねいに設計されているので、
かなり理知的な印象を受けてしまうのは確かです。
ところが、この管理人さんは 「参 諸国の性事情から見るパラドックス」 で
例のマドンナグラフを何の疑問を差し挟むことなく
そっくりそのまま引用しちゃってます。
まことに残念ながらこの一点で、このサイトの信用と名誉は
地に落ちたと言わざるを得ません。
こういうのを見ても、ランナー氏の一連のグラフの
影響力は侮れないものがあると思うわけです。
ちなみに、ランナー氏のグラフ中にあるランドスライド社というのは
大規模な児童ポルノサイトを運営していたグループの事で、
2000年に摘発されています。
大規模な児童ポルノサイト運営者が起訴される|WIRED VISION News (beta)
こういうのを見ると私はいつも規制反対派諸氏に
問いかけたくなるのですが、児童ポルノが規制されたからと言って、
なんで全年齢の強姦被害件数が増加するのでしょうか?
実際に議論しても、規制反対派諸氏はこのような私の疑問に対し、
ほぼ例外なく沈黙を守るというパターンを繰り返すのみです。
「ロリコンはエサを失ったら大人子供見境なく
襲いかかるケダモノ」 というなら話は分かりますが、
たぶんそういうことを言いたいのではないと思うので、ランナー氏含めた
規制反対派諸氏には真摯な回答を期待したいと思ってます。
(2011/7/28 entry)
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この記事へのコメント
1. Posted by わらぽん村の名無しさん 2013年07月26日 04:56
アメリカは1992年以降、ポルノ普及で強姦減少しているのだ
マドンナがどうとか、そういう些細な四滴しかできないのかねえ
1992年以降ポルノは普及してるが、強姦件数は減少しているよ
これはあなたがどれだけほざこうが
理屈をこねようが変わらない事実だ
>児童ポルノが規制されたからと言って、
>なんで全年齢の強姦被害件数が増加するのでしょうか?
全年齢、つまり未成年の強姦被害も加算してる
そして未成年の強姦被害が増えれば
総数の、全年齢の強姦被害件数が増加するのは当然
マドンナがどうとか、そういう些細な四滴しかできないのかねえ
1992年以降ポルノは普及してるが、強姦件数は減少しているよ
これはあなたがどれだけほざこうが
理屈をこねようが変わらない事実だ
>児童ポルノが規制されたからと言って、
>なんで全年齢の強姦被害件数が増加するのでしょうか?
全年齢、つまり未成年の強姦被害も加算してる
そして未成年の強姦被害が増えれば
総数の、全年齢の強姦被害件数が増加するのは当然